3月15日、第26回山のトイレフォーラムで事例発表してきました。
避難小屋新冠ポロシリ山荘のトイレの設置維持管理に関する活動について、諸先輩方の尽力と登山者の皆さんのご理解とご協力に関して感謝と恩返しでここまで維持ができておりますが、これからは、これらを恩送りして行くための活動につなげていく旨を話させていただきました。
当会からも、4名の参加をいただきました。
参加した会員からの感想です。
新冠ポロシリ山岳会を代表して参加しました🤣
山のトイレを考えるフォーラムでしたが、日高山脈が国立公園になり、今後の展望を環境省の方と、学者さんを交えてディスカッションしているのを目の当たりにし、参加して良かったです
当事務局長からは、幌尻山荘の歴史など真面目な発表があり、知らなかったことも知ることができ、改めて山荘の存続や安全な山道整備を行っていかなけばならないな
と思いました
以下、主催者からの記事になります。
山のトイレを考える会
4日 ·
昨日(3月15日)開催しました第26回山のトイレフォーラムにお越しいただきました皆様、発表、パネラーをお務めいただきました方々ありがとうございました(^^)近年稀にみる来場者の数で立見が出るほど多くの方々に来場いただき、新しい日高山脈襟裳十勝国立公園への関心の高さを伺うことが出来ました。環境省、地域自治体、山岳関係者に加えて全道の関心のある方々が連携協力して山トイレなどの山岳諸課題がより良い方向に進んでいくよう取り組んでいければと思います。
北海道新聞、毎日新聞の取材があり、今朝の新聞に掲載がありました。
(北海道新聞札幌版)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1135654/
(毎日新聞北海道版)
https://mainichi.jp/articles/20250316/ddl/k01/040/044000c
今回のフォーラムでの活動報告内容
トイレ維持は感謝と恩返し
幌尻岳新冠陽希コース
避難小屋新冠ポロシリ山荘でトイレ対策の取り組み
1 幌尻岳新冠コース
新冠川沿いを市街地から約50km、国有林の林道を、車を走らせ、イドンナップ山荘に到着。さらにここから徒歩で北電管理道路、奥新冠林道を19km歩くと漸く、無人の避難小屋新冠ポロシリ山荘に到着します。
このコースは、昭和50年代から年に一度の新冠町民登山で利用する人以外は、アプローチの長さから敬遠されていたルートであります。
しかし、多少の雨でも少ない渡渉と尾根歩きのため比較的完全に、しかも山行時間や日程に大きな変更が起きないことから、僅かではありますが、ガイド登山のルートとして利用されておりました。
しかし、平成10年代からの日本百名山ブームによって、その利点が評価され本州のガイドツアーやグループに利用されております。
近年では、年間で500~700名程が利用されるコースになっており、それに伴い
トイレの維持管理をはじめとする、登山道の笹刈り、安全管理、避難小屋の維持管理が
非常に重要になっております。
2 掘っ建てトイレからプレハブ型トイレへ
新冠ポロシリ山荘では、旧営林署時代に作られた掘っ建てのトイレ(地面に穴を掘った自然浸透式?)で、利用者が用を足しておりました。しかし、あまりにも古く老朽化していたため、近くの沢や山腹の藪で用を足す人が絶えませんでした。
そんな中、女性利用者が次第に増え、仕方なしに掘っ建てトイレを利用せざる得ない状況でありました。
しかし、2011年シーズン初めに大雪でトイレが押しつぶされ、それを車3台で引き起こし、何とか演劇のセット状態に復元しました。
その際にたまたまガイドツアーで避難小屋を利用していた、北海度の女性ガイドの第一人者のYさんから、これから10年以上は百名山の最後の山として数多くの高齢の人たちがこのコースをガイド付で登る様になる。なので、できるだけ早い段階でトイレ整備を検討した方がいいという、アドバイスをいただきました。
その当時は、新冠山岳会は、会長と私を含め10名程度、実際に小屋管理などは5名程度で行っていたものですから、資金もなければどう対処すればいいかも暗中模索の状態でした。
そう言っているうちに、2012年シーズンが幕を開けその準備に避難小屋に行ってみると、掘っ建て小屋トイレは完全に倒壊、修復不可能な状況に陥っておりました。
翌2013年に、先ずはトイレの新設を図ることとなり、近隣の建設会社の社長さんの甚大な協力を得て、旧山岳会の積み立てていた活動資金の一部で念願のプレハブの簡易水洗トイレ2基(中古)を導入したところであります。
利用してもらっておりましたが、維持管理に係る人手が不足しており、思うような管理が出来ないでおりました。
その後、2015年8月に、このトイレ問題が端を発し、有志による話し合いが行われ、多くの課題を解決するには、地元の人にこだわらないSNSを利用した新しい維持管理組織が有効ではないかということで、新生の新冠ポロシリ山岳会が誕生したところであります。早速、その年の10月には新しい組織が発足し。全道各地から数多くの人が参加してくれております。
このトイレは、汲み取り方式のため、用便を減量しないと運べないことから、知り合いの会社が北大との共同研究で開発した浄化槽用の発酵剤を投入、さらには、水洗水、汚水の上水を別の汚水タンクに貯留する方式をとっております。
特に発酵剤は用便の分解液状化、悪臭の軽減に大きな効果を上げているところです
3 トイレ管理上のトラブル
いくら発酵剤を投入し、かなりの減量化を図っては来ましたが、やはり利用者が増えることによって、処理はしきれなくなり、様々なトラブルが発生しました。
それまで年に1回の汲取りでよかった汲取りも、シーズン途中で何回か汲取らなければならない状況になり、当会の会長と会員で汲み取り作業を行ったところ、
これまで水中ポンプで問題なく汲取り作業ができていたのですが、ポンプが詰まりは破損するという事態に。
原因は、女性用の尿漏れシートや生理用品でありました。
管理する側は男性視点で管理していたので、昨今の女性クライマーが男性を上回って利用していること、そのようモノをトイレに捨てるということは全く想定していなかったのでした。
そのことをきっかけに急遽エチケット
ボックスや収集ボックスを設置し、注意
喚起を促し、利用してもらうこととなり
ました。
そして、トイレの清掃や発酵剤の投入、
トイレットペーパーの補充、水洗用水の補充などは、常駐の管理人がいない避難
小屋なので利用者が帰るときに行ってもらうように協力を仰ぎながら維持しており
ます。
4 避難小屋トイレの課題
① 汲取りにかかる費用
プレハブトイレ導入から2年ほどは、簡易的な水中ポンプで汲み上げ肥料袋に詰めて軽トラに積んで処理しておりましたが、会員の大きな負担となっていたことから、
車載型のバキューム装置を日頃から付き合いのある地元の農機具会社から購入した。
動力ですが、本来は電動機ですが、これを、4サイクルガソリンエンジンを搭載型
に改造し、使用する際には、林道の状況を考慮し、レンタルの4WDの2tダンプに
積載して汲み取りを行っております。
このレンタル料もスポット利用になるので割引がなく、また地元の営業所に常時おいていないので搬送料がかかるため、1回に9万円程度かかります。
これまでは、年に2回程度したが、今ではシーズン3回は汲み取りが必要になって
いるため、このレンタル料が負担になってきております。
このため、避難小屋利用される皆さんの協力金がなければ維持管理に支障をきたすこ
とになっております。
② トイレの老朽化
プレハブトイレも、導入から8年経過し、鉄部の腐食、水洗装置の故障など劣化
が進んでおります。
毎年小屋終いの際に会員によるペンキや錆止めの塗布、破損個所の補修など行っ
ておりますが、臭気や雪害などでいたるところに痛みが出始めております。
また、避難小屋のある所には大型車などがいけないことから、現地組み立てのパ
ネル式のプレハブトイレ若しくは小型トレーラー型のトイレとなることからスポン
サーや行政の支援を仰ぎたいと考えております。
③ バキューム装置の更新
これも、導入から6年が経過
していることから、大規模な
補修をかけるか更新かという
ことも視野に入れなければな
らない状況です。
また、このバキューム装置が
廃版ということも考えられる
ので、早めの財源を確保し、
更新しておかなければならない
と考えております。
5 25年シーズンに向けて
すでに、利用届などで、200名を超える利用申込があります。
利用者をはじめ北海道山岳ガイド協会のガイド、全国の山岳ガイドの皆さんがトイレをはじめ避難小屋、登山道などの維持管理に献身的な協力をいただいていることで快適なトイレが維持できているものと感謝に堪えません。
それらの感謝も込めて、今年も会員の協力を仰ぎ7月から9月まで3回の汲み取りを予定しております。
さらに、発酵剤も投入量を増やし、悪臭のない快適に利用できるトイレを目指して、取り組む計画であります。
ここ5年間の利用状況の推移(届出等の受付延人数)
延べ人数 適 用
2017年 1,854名
2021年 1,468名 利用は6/27~9/29まで
2022年 2,224名 利用は6/27~9/29まで
2023年 2,049名 利用は7/1~9/29まで
2024年 1,429名 利用は6/27~9/29まで 台風、雨で利用減
利用は基本2泊3日 2024年からは登山者全員にココヘリの携行を義務付け
6 トイレの維持は感謝と恩返し
当会が避難小屋、トイレを維持管理する基本は、登山者の皆さんが、安全な登山をし、無事に帰宅してもらうため、安息できる環境を提供することにあります。
避難小屋新冠ポロシリ山荘のトイレは、全道各地から応援してくれる会員、登山者そしてガイド協会や全国のガイドの皆さん、そして多くの企業に支えられ、今に至ります。利用された登山者の皆さんからは数多くの応援メッセージや支援金を頂戴し、それがまた会員の維持活動への原動力にもなっております。
結びに
皆さんから受けたご恩を、利用者の方や関係者、地元の方々にお返しするために、参加できる会員が毎月のパトロールや汲み取り作業に従事しております。
今後は、この活動の想いを将来につなげる恩返しから恩送りに発展させ、いつもまでも安心して登山できる環境を提供していきたいと考えております。
今後とも、皆様のご支援ご鞭撻よろしくお願いいたします。
感謝多謝